箱入り猫達

箱入り猫達

勤め先の最寄駅付近で、目を瞑り、汚い声で「びゃーびゃー」と鳴きながら歩いている子猫がいました。帰宅時間帯という事もあり、行き交う人は沢山いました。しかし、目が開いていない汚い子猫の為に、わざわざ足を止める人はいませんでした。勿論、私もその中の1人でした。脱毛サロンに通う暇もありませんね。

 

駅のホームで電車を待っていると、私の後ろに並んでいた女性が先程の子猫の話をしているのが聞こえました。それは、「子猫可哀相だね」や「誰か拾ってあげたら良いのに」等、子猫に対する同情の声でしたが、世間話の一環である事は誰が聞いても明らかでした。

 

そんな事を言うのであれば、お姉さん達が拾えば子猫も幸せだろう、と思った時、自分もその子猫に対し、電車の待ち時間を潰すネタにしてしいる事に気付きました。そう思ってしまった途端、子猫の汚い声が頭から離れなくなってしまい、私はもう1度、子猫のいた場所に戻りました。子猫は相変わらず鳴きながら歩いていました。きちんと子猫の周りを見てみると、雑巾の様な物が入っているティッシュ箱が落ちていました。

 

よく見ると、その中には汚い声の子猫と似た柄の子猫が1匹入っていました。恐らく、一匹は自力で外へ出たが、一匹は動く元気も無かったのかと思います。ここまで見てしまっては、見て見ぬフリが出来なくなってしまい、私は近所の動物病院に2匹を連れて行きました。獣医さん曰く、この状態の子猫を電車に乗せて移動させるのは難しいと言われ、その日は入院させて帰る事にしました。

 

翌日の昼休み、動物病院へ行くと、汚い声で鳴いていた方の子猫は元気に歩いていました。目が開かないのは、猫風邪というのにかかり、目ヤニで目がくっついてしまっていたからだそうです。この子は食欲旺盛で、先生や看護士さんに甘えていたそうです。しかし、もう1匹の子猫はご飯を食べても戻してしまったり、排泄が上手く出来ていないそうでした。しかし、仕事を終えた頃には、2匹共すっかり元気になっていました。箱の中にいた子は、まだ食事を上手に摂れないという事だったので、獣医さんに預け、1匹は連れてかえる事にしました。

 

現在では、2匹の子猫が、以前より一緒に暮らしているチワックスを母親と思っているらしく、3匹で楽しそうに暮らしています。友人にこの話をすると、「偶然」と言いますが、1匹が路上を歩いていたのも、駅のホームで私の後ろに並んでいた女性が子猫の話をしたのも、箱に入った子猫を見つけたのも、全て「偶然」ではなく、「運命」だったのだと思っています。